吉村あきこ

片づけ整理収納のプロに必要なCD状態（＝長年ずっと片づけられない状態が続いている、がんばっても全然うまく行かない状態）にあるクライアントへのサポートに関する知識・スキルについてご紹介します

慢性的な片づけの課題を理解する：CD状態の定義と特徴

CD（Chronic Disorganization）状態とは、長期間にわたって物や情報が整理されずに溜まり続け、日常生活に支障をきたす状態を指します。一時的な乱れや散らかりとは違い持続的な問題であり、自分で片づけようとしたにもかかわらず改善しない場合があります。ADHD（注意欠如・多動症）、自閉スペクトラム症、ホーディングと呼ばれる溜め込み癖、脳の機能障がい等を一因として関与していることがあります。
（※ADD、ADHDを持つ人全てが片づけられないというわけではありません。）

CD状態は、個人の生活や仕事に深刻な影響を及ぼし、日常生活の質や機能性を低下させる可能性があります。そのため、片づけ整理収納の基本的な知識や収納用品の情報だけでなく、脳の機能障害を理解し、専門的で適切なサポートやアプローチが必要とされます。

脳と片づけの関係

脳は、情報を処理し、行動や判断をコントロールする中枢の役割を果たしています。片づけは、空間や物などの情報を処理して、目標を設定したり、行動を計画したり、作業に集中したりと脳をフル回転させて行います。

たとえば、ADHDは注意力や集中力の低下、衝動性、多動性などの症状が特徴的な脳の機能障害です。これらの特性により、片づけようと思っても、すべきことがたくさん頭に浮かんできて何から始めたらいいかわからない、作業途中で他のことに気がそれてしまう、無意識のうちに手に持っているものをどこかに置いてしまいどこに置いたか忘れてしまうなど、片づけや整理を日常の中で継続的に行うことが難しくなることがあります。サリ・ソルデン氏の『片づけられない女たち』がベストセラーになったことや、近年、発達障害に関する情報が増えたことで、「片づけられないからADHDかもしれない」と悩む方も増えています。

脳の機能に問題がない方でも、人生の転機や大きなストレス、睡眠不足、加齢などの影響を受けて片づけが難しい状態になることもあります。片づけはとても複雑で難しい作業です。情報過多・ストレスの多い現代社会では、脳と片づけの関係は、片づけ整理収納のプロにとって欠かせない知識・スキルといえます。

クライアントに合わせたサポート：理論よりも個別の手法を追求するCDスペシャリストのアプローチ

CDスペシャリストは、日本ライフオーガナイザー協会が2011年から提携しているアメリカの研究団体 ICD（Institute for Challenging Disorganization：慢性的に片づけられない状態に挑戦する研究機関）が発行する資格です。

ライフオーガナイザー1級資格取得後、協会会員のみがさらなるスキルアップのために受講できる専科資格「CLO資格認定プログラム」の中でサーティファイドライフオーガナイザー（CLO）資格を取得するためのステップの1つとして、CD分野12時間分の講座を受講、スペシャリスト試験に合格することで取得することができます。

CD分野は、CDの基礎知識、ADHDの基礎知識、脳の実行機能、非言語コミュニケーション、心構えや境界線（バウンダリー）、道徳倫理など、クライアントと接するために知っておくべき基本的な知識を多岐にわたって学びます。

「片づけられないからADHDかもしれない」と悩む方からのご依頼があった場合、ADHDの診断の有無ではなく、どのような特性・行動のクセがあり、日々の生活にどのような影響があるのかをヒアリングを通して分析します。なんだか難しく聞こえるかもしれませんが、診断名は同じでも、その人が持っている特性や暮らしている環境によって困りごとはまったく異なります。

苦手なことだけではなく得意なこと・無理なくできていることは何か、周りに手助けをしてくれる人・環境はあるのか、どのような仕組みができたら困り感が減るのか診断や空間ではなく、「人」を主役として考えるライフオーガナイザーならではのアプローチです。

現在、6月開講のお申込みを受け付け中です。会員向けに質問会を予定していますので、ぜひご参加ください。

吉村あきこ